上條信山先生について 書象会会長 田中節山
信山先生の業績は、①書業、②書教育、③国際親善の三つが特筆されます。
上條先生は明治40年9月20日信州の松本市神林に生まれました。主な作品は信山先生作品ギャラリーで掲載しますが、先生は書の制作に携わる一方、戦後小中学校から姿を消した書教育の復活運動と、その発展に尽力されました。
また、書のふるさと「中国」には特に熱い思いを寄せられておりました。
中国に留学した先生自身の師である宮島詠士先生(1867〜1943)と張裕釗(ちょうゆうしょう:号は廉卿)先生(1823〜1894)のあつい師弟の情誼に心打たれ、中国でその美しい姿を保定市(河北省)、鄂州市(湖北省)の両市に二人の顕彰碑を建て、中国から高い信望を得られています。
更に日本の書を外国に理解させようと十数カ国を歴訪し、遂に書が「東洋独自の純粋抽象造形芸術」ということを諸外国の芸術家に認識させています。
こうした業績顕著により「文化功労者」の顕彰を受け、「正四位勲三等瑞宝章」を与えられました。
先生は90歳・平成9年に逝去されました。
主な個展
第1回個展還暦記念展
書業60年記念展 書 壮心やまず 上條信山展生誕100年記念展 など
主な役職
日展理事
全国書写書道教育研究会理事長
書象会理事長
東京教育大学教授
主な作品
汲古
堅勁
谷神不死
神品不滅
壮心
心弦
式子内親王のうた
「信濃の国」(長根県歌碑)
西郷南州詩(八幅)
他多数
著書
『書道単元学習と評価法』世界社、1951年(上条周一名)
『現代の書教育』木耳社、1963年
『現代書道全書』尚学図書、1970-71年(全5巻)
『書道技法講座 16 楷書 北魏 張猛龍碑』二玄社、1971年
『入門書道』尚学図書、1972年(全3巻)(共著)
『上條信山書法』尚学図書<現代日本書法集成>、1977年
『現代臨書大系』尚学図書、1983-85年(全10巻)
『現代書法創作大系』尚学図書、1986-87年(全5巻)
『書法基本帖 硬筆編』木耳社、1994年
『書法基本帖 楷書編』木耳社、1994年
『書法基本帖 行草編』木耳社、1994年
『書法基本帖 かな編』木耳社、1994年
『書法基本帖 篆隷編』木耳社、1994年
『硯上の塵 信山自伝』展望社出版、1995年
『ふだんづかいの書 楷書・行書・かな 書道基礎講座』展望社、1998年(田中節山との共著)
論文
「書道の評価はどうするか」実践国語研究所『実践国語』4号
穂波出版社、1950年、21-37頁(上条周一名)
「学習指導要領芸能科書道編と今後の書道教育の動向」
文部省中学校課・高等学校課『中等教育資料』1巻2号、明治図書出版、1952年、4-5頁
「書道教育における将来の問題点1」実践国語研究所『実践国語』14巻153号
穂波出版社、1953年、3809-3813頁(上条周一名)
「書道教育における将来の問題点2」実践国語研究所『実践国語』14巻155号
穂波出版社、1953年、4021-4024頁
「書芸術の思想的根拠における一考察」『東京教育大学教育学部紀要』11巻別冊
1965年(ページ数不明)(上条周一名)
「毛筆学習のめざすもの―毛筆習字教育の問題点―」
筑摩書房『言語生活』195号、1967年、29-31頁(上条周一名)
おもな作品集
『上條信山作品選2002』松本市美術館、2002年
『上條信山臨書集』書象会、2005年(全4巻+特別篇)
『書 壮心やまず上條信山 生誕百年記念展』松本市美術館、2006年
上條信山先生 年譜